竣工年月 2025.09

静謐さは、この場所が重ねてきた歴史の重み。
創建から120年を超える寺院の境内に、焼杉を巡らせた黒い外観の家が、ひっそりと佇んでいる。
この建物は寺院の庫裏(くり)をリノベーションしたもの。庫裏とは寺院の厨房を指す。
もともと、明治期に建てられた平屋だったが、昭和になって隣の二階建ての建物と繋げられていた。
時代の流れによって、あるいは求められる使い勝手によって、変化してきたのだがここで一旦リセット。
スケルトンまで戻して、住まいとして再生。いま、あるべき姿を模索した。
広々とした玄関は高天井にして、建築時から家を支えてきた梁を見せた。
目をひくのは、正面の薄墨色の和紙。同じ和紙をリビングにも使うことで、空間に流れをつくりだしている。
LDKでも梁をあらわし、さらには「金輪継ぎ(かなわつぎ)」という日本古来の技法で補強した柱が、この家をシンボリックに語る。古材と新材を組み合わせた継ぎ目は、造形として美しいだけではなく、家を継いでいくことそのものを表現した。
リノベーションによって現代的な快適さも備わった。
トイレ、洗面、浴室といった水回りはキッチンからのびる廊下に沿ってまとめて配置。
ランドリースペースの脇の勝手口やウォークインクローゼットが日々の暮らしをスムーズにしてくれる。
かつて煮炊きの湯気が立ち上っていた庫裏は、家族が集うスタイリッシュな空間に――。
この先100年の、新しい一歩を踏み出した。







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